日本文化人類学会賞・学会奨励賞歴代受賞者一覧

更新:2016年06月16日



第11回日本文化人類学会賞の授賞

2016年05月29日

 日本文化人類学会は、第11回日本文化人類学会賞を清水展氏に授与することとした。
(授賞対象業績)
『草の根グローバリゼーション―世界遺産棚田村の文化実践と生活戦略』(2013年、京都大学学術出版会)に代表される一連の「コミットメントの人類学」研究
(授賞理由)
 清水展氏は、フィリピンでの長期間にわたる現地調査に基づき、これまで、Pinatubo Aytas: Continuity and Change (1989年、Ateneo de Manila University Press)、『出来事の民族誌―フィリピン・ネグリート社会の変化と持続』(1990年、九州大学出版会)では、ピナトゥボ・アエタの日常生活の安定した連続性を断ち切る大小の事件、『文化のなかの政治―フィリピン「二月革命」の物語』(1991年、弘文堂)では、1986年のフィリピンのピープル・パワー革命という出来事、The Orphans of Pinatubo: Ayta Struggle for Existence (2001年、Solidaridad Publishing House)、『噴火のこだま―ピナトゥボ・アエタの被災と新生をめぐる文化・開発・NGO』(2003年、九州大学出版会)では、1991年のピナトゥボ山の大噴火という出来事を取り上げ、過去5年間では、『草の根グローバリゼーション―世界遺産棚田村の文化実践と生活戦略』(2013年、京都大学学術出版会)において、世界遺産に登録されたイフガオの棚田村を巡るグローバリゼーションというより大きな出来事を取り上げ、環境の変化と生活の変遷における出来事への注視という一貫した研究姿勢の下、独創的な研究を展開してきた。
 アエタに関しては、ピナトゥボ山の大噴火による移住と生活様式の転換、新たな土地におけるコミュニティ復興過程を詳細に追い、イフガオに関しては、開発による森林破壊のために従来の生活様式を保つことが困難になったため、植林運動を通じてグローバル支援を取り付け、コミュニティと生活の再生を行う過程を、植林運動を推進する指導者と自らを真のフィリピン人として作り直そうとする映像作家という二人の人物の姿を通して、「草の根」グローバリゼーションの一つのあり方として、生き生きと描き出している。
 清水氏の研究の特質は、これらの出来事を単なる傍観者として眺めるのではなく、そこに積極的にコミットする点にある。ピナトゥボ山の大噴火の際には、その最大の被災者であったアエタの緊急救援や復興支援に深く関わることを通して、現地に巻き込まれて行く人類学を模索・試行し、イフガオの植林運動に関しては、その積極的な支援者として、ドナーへのプロジェクト申請を手伝い、プロジェクト評価を行うなど、開発援助に意図的・戦略的に関わって行く「コミットメントの人類学」を実践する。
 清水氏は、現実として目前にすすむ状況、急激な変化において受動的であった先住民が戦略的・積極的に行動に移るモメントとその姿を重視し、自らの逡巡の中で着地点を模索しながらそこにコミットして行く姿を同時に描き出すことによって、人類学の方法としての参与観察の精神をラディカルに追求し、参与と観察のバランスについて我々に再考を促す。このような清水氏の研究姿勢は、とりわけ開発や災害、紛争や難民、政治運動や社会運動、貧困、性的マイノリティ、生命倫理など、積極的にコミットすることが求められる現場で調査を行う人類学者への新たな指針となろう。
 以上の貢献を高く評価し、清水展氏に第11回日本文化人類学会賞を授与する。

第11回日本文化人類学会奨励賞の授賞

2016年05月29日

 日本文化人類学会は第11回日本文化人類学会奨励賞を佐藤若菜氏に授与することとした。
(受賞者)
佐藤若菜
(授賞対象論文)
「衣装がつなぐ母娘の『共感的』関係―中国貴州省のミャオ族における実家・婚家間の移動とその変容」
(『文化人類学』第79巻3号、2014年)
(授賞理由)
 本論文は、中国貴州省のミャオ族における民族衣装と母娘関係に焦点を当て、衣装の制作・所有・譲渡の様態と結婚後の女性の実家・婚家間での移動パターンとが1990年代に大きく変化したことに着目し、母娘関係が民族衣装を介して「共感的」に構築されていることを鮮明に描き出した論考である。ミャオ族の女性の民族衣装はかつて女性自らが制作し着用する日常着に過ぎなかったが、盛装の普及、洋服の日常着化、出稼ぎによる現金獲得等により、儀礼的機会に着用する礼服としての性格を強め、威信財としての価値を持つようになった。また、教育の普及と出稼ぎの一般化にともない、衣装の制作主体が娘(女性自身)から母親に移行し、かつて女性は婚礼後一定期間をおいて夫と暮らし始めるのと同時に婚家に自ら制作した衣装を持参したが、実家から婚家への女性の移住が早まるとともに、実家の母親が娘の衣装を保管し、その後段階的に母親から娘に譲渡されるようになった。本論文では、民族衣装の威信財化、制作主体の変化、婚家への早期移住、母親による保管・譲渡といったこれらの現象の相互連関の中で、民族衣装というモノを媒介として構築される母娘関係の動態がきわめて説得的に描き出されている。
 本論文は、中国貴州省のミャオ族を対象とした綿密な現地調査に基づき、民族衣装と母娘関係に関する民族誌資料を丹念に提示すると同時に、近年の親族理論の進展ならびにモノと人との全体を捉える今日的なアプローチを踏まえて考察を深化させてゆく意欲的な論考として、第一級の価値を持つものと言えよう。
 以上の理由により、本論文を高く評価し、日本文化人類学会研究奨励賞を授与する。


第10回日本文化人類学会賞の授賞

2015年05月31日

 日本文化人類学会は第10回日本文化人類学会賞を浜本満氏に授与することとした。
(授賞対象業績)
『信念の呪縛―ケニア海岸地方ドゥルマ社会における妖術の民族誌』(2014年、九州大学出版会)を代表作とする人類学的理論構築に関する一連の業績
(授賞理由)
 浜本満氏は、ケニアのドゥルマ社会において30年にわたり調査を実施してきた。個別事例の民族誌的記述と理論的分析の両者を説得的・効果的に接合しようとする浜本氏の研究姿勢は初期の論稿から新著『信念の呪縛』(2014年)に至るまで一貫しており、浜本氏の一連の研究が多くの研究者や学生を魅了し、高度な知的刺激を与え続けてきた点は高く評価される。
 浜本氏は物象化論やイデオロギー論、現象学、分析哲学、構造分析等に関する広範かつ重厚な知識を背景として、文化人類学者が立てるべき問いが何であるかという点を執拗に追究してきた。それは、過去の一連の論文および前著『秩序の方法』(2003年)においても顕著である。例えば、『秩序の方法』で浜本氏は、儀礼的行為の無根拠性(恣意性)を焦点化し、儀礼の背後につい想定したくなる文化的意味や社会的規則の無根拠性を指摘する一方で、なぜ人びとがそれらの無根拠な規則に捕らえられ、いかなる秩序をリアリティとして生きているかを解明しようと試みた。
 『信念の呪縛』はドゥルマ社会の妖術信仰と実践を研究対象とした「信念の生態学」に関する民族誌である。執拗なまでに細部に拘った記述を通して、浜本氏は妖術という信念の性格について、そもそも「信じる」という行為が語られ、可能になる条件を論理的に検討しながら、ドゥルマの妖術もまた些細な出来事を契機として「自己を再生しつづけていく巨大な物語装置」であると同時に、この巨大な物語装置は些細な出来事で停止する可能性をもつ信念であることを看破してゆく。そして、妖術に呪縛されない浜本氏自身の信念をドゥルマの妖術信念への対抗言説として用いながら、現代社会における信念の在り方についての議論を一般読者にも分かりやすい形で提示することに成功している。
 浜本氏の上記業績は、フィールドワークに基づく民族誌という古典的なフォーマットを採用しながらも、人びとの語りと実践を忠実に再演しつつ、そこから文化人類学的思考の可能性を極めた研究として人びとを啓発し、挑発する知的刺激に満ちており、文化人類学的知の一つの到達点を示している。
 以上の貢献を高く評価し、浜本満氏に第10回日本文化人類学会賞を授与する。

第10回日本文化人類学会奨励賞の授賞

2015年05月31日

 日本文化人類学会は下記の2名に第10回日本文化人類学会奨励賞を授与することとした。
(受賞者)
大場千景
(授賞対象論文)
「無文字社会における『歴史』の構造―エチオピア南部ボラナにおける口頭年代史を事例として」
(『文化人類学』第78巻1号、2013年)
(授賞理由)
 本論文は、エチオピア南部ボラナ社会の口頭年代史に関する詳細なフィールドデータに基づいて、ボラナの人びとが過去や現在、さらには未来のさまざまな出来事を、彼らの社会構成原理(年齢階梯制、特に父子は互いに4世代離れた年齢階梯に属さなければならないという「ゴゲーサ」のサイクル)と文化概念装置(運命論ないし災因論としての「マカバーサ」のサイクル)の複合から成る「回帰する歴史」の構造の中に組み込んで伝承ないし記憶していることと、逆に、さまざまな出来事を歴史の中に組み込むという実践を通して、ボラナの人びとが「回帰する歴史」の構造を持続的に創出、再編していることを明らかにした論考である。
 広範囲にフィールドワークを実施して信頼に足る十分なデータを収集し、また、そのデータをオーソドックスではあるが緻密かつ大胆に分析してボラナ社会の当事者の歴史認識のあり方や再編の実態を明らかにする大場氏の手際は鮮やかである。また、ボラナ社会の歴史の「構造」が本来的に歴史を一元化すると同時に多元化(複数化)するものでもあることを明らかにし、ローカルな場における出来事の解釈や記憶、伝承といった歴史的実践を丹念に調べ、綿密に分析することによって、初めて当該社会の歴史認識のあり方や思考の広がりの解明が可能となることを説得的に示した点も高く評価される。
 以上の理由により、本論文を高く評価し、日本文化人類学会研究奨励賞を授与する。
 
(受賞者)
左地(野呂)亮子
(授賞対象論文)
「空間をつくりあげる身体―フランスに暮らす移動生活者マヌーシュのキャラヴァン居住と身構えに関する考察」
(『文化人類学』第78巻2号、2013年)
(授賞理由)
 本論文は、フランス南西部において、1年のうち一定期間だけを移動生活に充てているマヌーシュが生活拠点とする居住地を考察の対象とし、そこで、拡大家族集団が共住の単位となり、まとまって置かれた複数の移動式住居(キャラヴァン)の内部と共同で利用する周辺の野外環境とが全体としての生活領域を構成することを記述する。その綿密な記述から、マヌーシュの生活領域が家屋の内部と外部に二分されるものではなく、また日中の大部分を過ごす野外空間がさらに外部に広がる環境からも明確に分断されないという特徴を持つことを析出する。さらに隣人の宿営区画や人が行き来する道、広場など、定住社会の住民を含む周辺の人々と遭遇する可能性が高い空間に身体の正面を向け、「視線が相互に交じり合う空間」をつくりだすマヌーシュの日常的「身構え」は、共在感覚を創出することによってマヌーシュの居住空間を閉じたものとせず、潜在的緊張関係にある他者を含む外部へと拡張するような空間構築を可能にしていることを明らかにする。
 本論文は、家屋の構造や配置といった物理的な空間構成要素の分析にとどまらず、居住空間構築プロセスにおけるマヌーシュ特有の身体の積極的役割を明らかにし、それが周辺社会の近代的な空間認識と軋轢を引き起こす要因ともなっていることを示すと同時に、その自他を包摂する空間社会生成の可能性を説得的に示すことに成功している。
 以上の理由により、本論文を高く評価し、日本文化人類学会研究奨励賞を授与する。



第9回日本文化人類学会賞の授賞

2014年04月11日

 日本文化人類学会は第9回日本文化人類学会賞について該当者なしとした。

第9回日本文化人類学会奨励賞の授賞

2014年04月11日

 日本文化人類学会は第9回日本文化人類学会奨励賞について該当者なしとした。

第8回日本文化人類学会賞の授賞

第8回日本文化人類学会奨励賞の授賞

第7回日本文化人類学会賞の授賞

第7回日本文化人類学会奨励賞の授賞

第6回日本文化人類学会賞の授賞

第6回日本文化人類学会奨励賞の授賞

第5回日本文化人類学会賞の授賞

第5回日本文化人類学会奨励賞の授賞

第4回日本文化人類学会賞の授賞

第4回日本文化人類学会奨励賞の授賞

第3回日本文化人類学会賞の授賞

第3回日本文化人類学会奨励賞の授賞

第2回日本文化人類学会賞の授賞(該当者なし)

第2回日本文化人類学会奨励賞の授賞

第1回日本文化人類学会賞の授賞

第1回日本文化人類学会奨励賞の授賞