特別企画「ラウンドテーブル2015」について

 第49回大会準備委員会は、研究大会への参加者ができるだけ多数(理想的には全員)出席できるラウンドテーブル企画の時間を研究大会期間中に3時間前後確保するよう、日本文化人類学会理事会から要請を受けました。大会準備委員会としては、これが研究大会の母体である日本文化人類学会の会員によって選ばれた理事会の要請であること、またラウンドテーブルの趣旨が本学会の国際化と言う重要な課題に関するものであること、などの理由により、この要請を受け入れて、大会初日(5月30日)の午後にラウンドテーブル企画の時間帯を設定することといたしました。理事会の要請の趣旨に鑑み、この時間帯には分科会や個人発表のプログラムを組んでおりません
 この企画は日本文化人類学会「国際情報発信強化」特別委員会が主催するものです。趣旨とプログラムは、下記をご覧ください。また趣旨とプログラムのPDFをダウンロードページにもアップしております。

特別企画「ラウンドテーブル2015」(「国際情報発信強化」特別委員会主催)
「国際化/グローバル化」の波動と文化人類学――複数性の岐路に立って

日時:5月30日(土)15:05 - 18:00
登壇発言者:9名(プログラム参照)
司会:真島一郎(東京外国語大学:総務担当、特別委員会委員)

趣旨

 本ラウンドテーブルは、特定の制度的対応への要請を直接の契機としながらも、当の要請内容が「国際化/グローバル化」に関わる以上、文化人類学という学そのものの実践としての価値を、学会全体で緊急に自問すべきとの判断のもとで、企画された。
 ここでいう主たる要請とは、近年の文部科学省が、国内の学会組織や高等教育研究機関に求めている「学問の国際化/グローバル化」、ないしは「国際情報発信強化」に他ならない。具体的には、学会機関誌の刊行助成にさいして、英語による学術成果の発信強化が要請されており、本学会も、「国際情報発信強化」特別委員会の設置をはじめとした、早急な対応を迫られている(詳細については、『文化人類学』誌最新号(第79巻4号)所収の会長の特別寄稿を参照されたい)
 新自由主義体制のたえざる変容・増殖過程にたいして何らかの応答を余儀なくされる今日の世界状況からみれば、日本国内におけるこうした「上からの国際化」も、知の「国際化/グローバル化」をめぐる巨大な波動の一角にすぎない。錯綜するポストコロニアル状況を反映した-または状況に抵抗した?-人類学研究組織の国際化・世界化にむけた動き(IUAES、WCAA…)も、これと歩調を合わせるかのように活性化の度を増し、本学会は、国内のみならず国外からも、「国際化/グローバル化」への機敏な対応を-上記国際諸組織への積極的な連携・参加・合流という形で-要請されているからである。
 ただし本企画は、これら二重の岐路に立たされた現状の深刻さを確認するだけの集いではない。そもそも、人間の生の複数性とともに、生における一種の-「グローバル化」とは異質な-世界性を交差的に思考する営みこそが人類学であったのならば、他の何にもまして「国際化/グローバル化」という主題は、他のいかなる分野にもまして文化人類学の知としての実践が争点化する再帰的主題、つまりは試金石といえないか。学術成果の英語化をめぐる要請をまえに、日本における人類学、あるいは日本語で表現される人類学は、いかなる複数性と世界性を、みずからのうちで文字どおり再帰的に表明し、知の実践として証明し、さらには学の未来にむけて想像=創造しうるのか。日本の人類学は、人類学それ自体の複数化に、あるいはすでに存在してきた「複数の人類学」の新展開に、いかなる介入をとげうるのか。困難な局面こそが再考の好機であると捉えるとき、日本の人類学が未来にむけていま、育むべきもの、脱却すべきもの、回復すべきものとはなにか。
 本ラウンドテーブルは、以上のような問題提起をふまえ、今後の学会としての活動方針を見定める目的で、可能なかぎり多くの学会員の所見を乞う企画である。登壇者は、上記「国際情報発信強化」特別委員会の今期委員にくわえ、学会長、および「学問の国際化/グローバル化」という課題を制度の要請以前から独自に伐り拓いてきた気鋭の若手会員から構成される。ただし、「ラウンドテーブル」と銘打つ以上、本企画の最も重要な部分が、これら登壇者の発言をふまえた、会場参加者全員による総合討論の場にあることはいうまでもない。

プログラム

◆ 趣旨説明
15:05 - 15:20 関根康正(関西学院大学:会長)

◆ 発言
15:20 - 15:35 桑山敬己(北海道大学:特別委員会委員長、JRCA編集主任)
15:35 - 15:50 太田好信(九州大学:特別委員会委員)
15:50 - 16:05 松田素二(京都大学:特別委員会委員)

◆ コメント
16:05 - 16:15 窪田幸子(神戸大学:特別委員会委員、国際連携委員会委員長)
16:15 - 16:25 田中雅一(京都大学:特別委員会委員、『文化人類学』編集主任)
16:25 - 16:35 山本真鳥(法政大学:特別委員会委員)
16:35 - 16:45 中村 寛 (多摩美術大学)
16:45 - 16:55 丸山淳子(津田塾大学)

16:55 - 17:05 休憩

17:05 - 18:00 総合討論